☛ 1. 商品より学ぶ 〚 生鮮の真髄 青果編 〛 



青果の真髄



ひと味 商品より1

SMの青果物部門の担当者の一日は、バックヤードで、今朝店舗に届いたばかりの野菜と果物を手にとることから始まります。
商品との初対面です。

ただここではまだ < 商品 > になっていません。
詳細な素性の知れていない < 農作物 > なのです。
一べつしてその何たるかを知り、それなりの < 値打ち > を判定して< 商品 > に仕上げ、店頭に送り出す( 陳列と販売 )仕事をします。

その一連の流れをスムースにこなすことがSMの青果担当者に課せられた重要な業務なのです。

どのような環境であれ、状況であれ、到着した荷物を検品しなければなりません。
数量をカウントし、到着した時点の状態をチェックします。
正常か、破損していないか、などなどの検品作業をします。
さらに、直接店頭に品出しをするか、それとも加工して店頭に出すか、すぐにか、後かを判断します。
あるいは一度シンク( 水槽 )に入れて冷やしてから加工するか、一時保管するとしたら、常温で保管するか、冷蔵庫( ストッカー )に入れるかなどなどの管理作業があります。

一連の業務と作業を、単独で、あるいは多くの人々の働いているその場で判断し、対応します。
多くの要件に対して瞬時での判断です。

その一見して <単純な作業> に心がこもっているか否かが勝負です。
なんのよどみもなく、スムーズにできるようになった時、青果担当者として、胸を張り自信を持って商品との対話の場に立つことになります。

第1歩のスタートの始まりです。

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ひと味 商品より2


野菜と果物はその栽培環境と生産される状況によって千変万化しているものが収穫されています。
極端に言えば、どれ一つとして同じものはありません。
農作物ですから当然といえば当然です。

おおよそ各品目、品種ごとに商品特性が類似しているものを選び( 選果選別 )等階級別にまとめます。
かってはきめ細かに区分けされていたものが最近では一部で農作業(特に煩雑な選果選別作業を対象にして )の省力化の目的で無選化あるいは簡素化されてきている半面で、高度なIT技術を導入した光センサーによって選果選別されるなど両極端化しています。
加えて選果選別基準が全国的に統一されてもいませんし、等階級の名称呼称も個々につけられていますので一層混乱の度を深めています。
固有のブラントがつけられ、許され、通用してさえいます。
国産青果物に限らず、輸入青果物でも同様です。
かといって、時流からそれを逃れることはできません。

加工品と異なり野菜や果物、水産物などの生鮮食品の分野では栽培環境と生産される状況によって形状・品質・内容が均一ではなく微妙に異なっていますから、商品価値にも違いが出ていることは消費者の皆さんは十分に知り尽くしています。
担当者は可能な限りの商品知識と技能・技術で商品を均質・均一化に近づけようと努力します。

それによって < 農産物 > が < 商品 > に変わります。
< 店の信用 > がかかっています。
身が引き締まるおもいです。

そして、相応の価値判断をし、販売価格を決めます。
ここが青果担当者として < 目利き > の正念場であり、能力の見せどころでもあります。

“ 生きがい ”に身が引き締まる瞬間です。

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ひと味 商品より3

単に、店舗に到着した荷物( ここではあえて入荷した商品とはいいません )を車から降ろし、バックヤードに運び入れ、加工し、決められた通りに値付けをし、売場に出して販売するだけのことであれば、誰にでもできます。

青果物の取扱い際しては、マニュアル通りで進めればそれほど困難なことではなく、今日採用したばかりのアルバイトの高校生でも、パーナー社員の皆さんでも簡単にできる作業だからです。

ここで認識しておかなければならない事は単に < 物を売る > だけではないことです。
青果担当者はそれぞれの商品の特性を良く理解し、 < 最高の状態 > ( ベターでなく、ベストです )で消費されるように提供しなければなりません。

鮮度の低下・劣化した野菜は商品ではありません。
美味しい果物でなければ商品ではありません。
( ただし、一部に追熟の必要な商品があります )
従って、必要以上の量のストックした商品( 翌日の開店までに入荷できない商品と追熟の必要な商品をさします )があってはならないのです。

青果物のほとんどの品目は当日販売 ( 即日販売 )が原則です。
必要以上の在庫を残さないのが大鉄則です。
店内の気温( SMの店内では通期23℃に設定されています )は商品の品質の進行( 劣化 )を速めています。
たとえ冷ケースで陳列してある商品でも同様です。
ましてや非冷ケースの商品は外見が変わっていないように見えても品質は徐々に劣化しています。

ご来店客の状況や、売れ行きなどをたえずマークし、時々刻々の変化に応じた販売にあたる必要があります。
個々の商品のその程度( 品質レベル )を判断するのが青果担当者の重要な職務です。
売価を引き下げた値引き対応をしたり、バンドル販売をかけたりして販売促進にあたります。
「 見切り千両 」という諺は、 < お店の信用 > のバロメーターでもあります。

当然のことですが < 売り切る > 努力をし、在庫を極力減らします。
その結果としてロスも減ります。

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ひと味 商品より4

店内の売場に一杯の商品が陳列されているのは見事なものです。
豊富な商品の中から、自分が欲しいものを選ぶ…。
そのことで、お客さまは対価として満足されます。

< 豊富な商品 > < 低廉な価格 > < セルフセレクション > 。
この3点が < バランスよく > 構成され、そこではじめて店舗として認識され評価されます。
お客さまは満足してお買い物をされ、結果として店舗は繁盛します。

< 価値の共有 > です。
それがどちらかに扁重していてはいけません。
お年寄りにはお年寄りなりに対応し、主婦には主婦向きに対応し、男性のお客様には男性のニーズに合わせ、子供には子供に合わせた < 商品 > を < 販売方法 > で接することがポイントです。
それによってお客さまとの < 目線をそろえる > ことで可能になります。

商品は見やすく、手に取りやすく、判りやすく、丁寧に陳列します。
判りやすく商品情報を掲示します。
判りやすい価格で提供します。
そのことが売場作りの大原則です。
もちろん、陳列されている商品はそれぞれの特性を100%発揮させます。

商品と、売る側と、買う側が一致し、そこに信頼感が醸成されるのが理想的な形です。
そのための努力が欠かせません。

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ひと味 商品より5

青果物取扱いの担当者の多くはプロを自認していながら、その本質の部分については意外に知っていません。
毎日、身近かに商品を取扱っていることから、その全てを知り尽くしているような錯覚にとらわれているせいです。

青果物の本質 = 生態はそのように生やさしいものではありません。
農家に生まれ、終始野菜や果物に取り囲まれて育った環境にあった者であればともかく、それ以外の環境にあった人は知識は豊富に持ち合わせていたとしても、容易にその本質は知り得ないものなのです。
野菜・果物の調理にかけてのプロ( その多くは家庭の主婦 )である人もまた同様です。
生産 → 流通 → 消費 と、全てをマスターしている人はごくわずかにしかいません。
生半可の知識で推定し、その基準で判断し、取扱うことでの稚拙な結果と、失態は数少なくありません。
いわば < 見せかけのプロ > での対応では満足な業績は期待できないということです。
本物のプロの目から見れば歯がゆい限りです。

栽培環境に始まって立地条件、時期、品種選定、播種、発芽、初期生育、( あるいは開花 )、成育、施肥防除管理、成熟、そして収穫、この一連の流れを完璧にフオローする事は親が子を育て成人として送り出すのと寸分変わっていません。
不十分な対応ですますことはできません。
ではどうしたらよいかとなると < 深く知り > < 育ちを見守り > 、必要に応じて < 適切に > < きめ細か > に手をほどこして対応する事に尽きます。

容易なことではありませんが、それらのことを可能にする手段は、決して困難なことではありません。

わずか一坪でもよい 花壇 に、あるいは のきした に、はたまた ベランダ に、ポットに種をまき、苗を植え、水をやり、ひなた に出し、風をおおい、虫を防除することで 手に取るように野菜・果物の本態がおぼろながらもわかってきます。
気持ちの持ちよう次第です。
手間のかからないプロへのアプローチ、近道といって良いでしょう。

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ひと味 商品より6

野菜・果物のカテゴリー( 分類 )については、一般には 「 素材型分類 」 での区分けがなされていますが、その原点は学術分類からのもので、諸事万端に近代化が取り入れられた明治以来のことで長年にわたり定着し、現在でも本流として続いていることに由来します。

その流れに従い表現は若干は手直しされていますが、野菜では植物学の種目から 「 葉茎菜類 」 「 果菜類 」 「 根菜類 」 「 土物類 」 「 菌茸類 」 など。
果実は 「 果物 」でそのままです。
行政面でもこの区分けによる分類が取り入れられ、流通面もそれにならっています。
当然、市場での対応も同様です。
その方が各品目の取扱いに際しても < 類似点 > が多く利便だからです。

栽培環境や生産条件、生長・成熟状態や、収穫後の取扱いも 保管 ・ 保存 ・ 貯蔵環境 での条件、例えば温度帯などがほぼ同一ですし、病虫害対応などにも大きな差異がないためです。
従って < 取扱が容易 > だという利点からの < くくり > であったからです。

SMでのハード面でも、例えば什器の配置から、棚割りの仕方にもそのパターンでの分類が踏襲されています。
そのことはあくまでも < 売る側の利便性 > が中心であって < 買う側の利便性 > は考慮に入れられていません。
< 生産性 = 合理的対応 > にもとづくもので、< 買う側 >からの< 食生活の合理的対応 > からすれば必ずしも適当な < くくり >とはいえません。
ある一つの調理にその食材があちこちに分散していれば取り揃えるのに容易ではありません。
大筋でも揃っていればそれに越したことはなく便利な筈です。

この点をカバーする目的で < くくられた > 分類が 「 提案型分類」です。
食生活の利便性がキーになっています。
この分類の仕方が欧米で主流になっています。

我が国でも、従来から分類の仕方に特有の食生活の実体を加味した新しいタイプの 「 提案型分類 」 が取り入れられつつあります。
野菜でいえば 「 生食野菜 = サラダ野菜型 」 「 煮物野菜型 」 「 鍋料理野菜型 」 「 薬味野菜型 」 「 妻もの小物野菜型 」 「 加工野菜型 」 など、果物でいえば 「 デザート果物型 」 「 スナック果物型 」 「 ギフト果物型 」 「 食材果物型 」 「 ヘルシー果物型 」 「 加工果物型 」などの分類です。

それらがさらに飛躍して 「 生産者コーナー 」 「 朝どりコーナー 」 につながり、さらに全店的にも 「 PB仕様商品群 」も分類されます。

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ひと味 商品より7  
「 必要は発明の母 」の ことわざを 地でいっているのが我が国の農産物の新品種ブームです。
年々おびただしい数の新品種が登場しています。
一つ増えれば一つ減ってもよいはずで、ここに < 品種更新 > が現実問題として起きています。
伝統的ともいえる品種が静かに消えていっています。
新品種は < 必要に追われる > ようにして育種 ・ 育成されています。
その背景をしっかりと認識しておくことが今後の対応につながります。
< 今後の対応 > は即 < ニーズの方向 > であるからです。

戦後からの < 農産物の育種の流れ > がそれを物語っています。
その原動力はその時代の < ニーズ = 必要 > さです。
列記すると次の通りです。
「 増産型品種 」 から 「 高品質型品種 」 になり、次いで 「 栽培

環境に強い品種 = 減農薬型品種 」に、さらに進んで作る側も、食べる側も 「 安全、安心型品種 」 になり、現在は 「 機能性品種 」に重点がおかれて育種・育成されています。
「 ××に適した品種 」 です。
例えばアントシアニン含有量の豊富な甘藷( かんんしょ=さつま芋 )の品種や、サラダに向いた澱粉含有量の多い、反対に煮くずれしないように澱粉含有量の少ない馬鈴薯( ばれいしょ=ジャガイモ )、酒米用の米の品種、香り米や、香り苺。
生食と加工、それぞれに適した人参などなど枚挙に暇がないほどです。
それに栽培立地に適した 「 地方品種 」 が加わります。

お客さまはそうした情報を良く知っています。
知っているどころか、絶えず < 新しい何か > を < ニーズ > として求めているのです。
従ってお客さまと同じペースで情報を保持するか、あるいは一歩進んで新しい情報を発信し、リードしての対応が求められています。
最近の各業種の動きをみれば当然といえます。
( 特にIT業界では顕著です ) 次はなにがどのような形で出現するかです。
ちなみに農産物の業界ではこれまでの < 利点( 多収性、高品質、安全性、高機能など、 ) > を全て備えていながらかつ < ローコスト > での生産される品種と言われています。

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ひと味 商品より8

日本製の商品の品質の高さは世界で高く評価されています。
農産物とても同様で、 「 美味しい日本の野菜・果物 」 の評判は広く認知されています。

ただしその価格となるとまた別格で、まだ普遍性はありません。
< 美味しさ > だけではなく < 適当な価格 > もそれに伴っていなければならないのです。
< 適当な価格 > は、いわば < 安さ > です。

人件費の安さを武器にした中国や、東南アジアから、あるいは栽培規模の違いから大量生産された農産物が、世界各地から我が国のマーケットを狙っています。
はたまた新機軸で開発された新商品もあります。
続々と豊かな消費市場になだれ込むのです。
そして、争うようにマーケットシェアを広げ、定着しています。
海外から流入される新しい商品は、人の交流と、情報の共有からますます活発になることが予想されます。

それもまた豊かさを求めるニーズのおもむくままだからです。

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ひと味 商品より9

店舗の現場にいると、実に数多くの、しかも広範にわたっての質問が寄せられてきます。
Q&Aの形でそれに応じています。

情報が先行している時代です。
情報は周辺・身辺の成熟を待っていてはくれませんし、停滞していません。
取り残されることは < 負け > を意味しますので、心ある人は < 何か > があると < 情報を発信 > して何かを知ろうとします。
それが < 質問 = Q > です。
特に自らが持ちあわせている知識との相違があると、あるいは新しい情報にかかわる興味が湧くと、探求に必死です。
現場で担当者に質問を投げかけ、回答を求めます。
担当者の持ち合わせていた知識の範囲を越えて納得できる回答が得られなければ、疑問はさらに増幅され、最悪の事態になると不信感から、クレームの対象にまで拡散します。

ある事例では、即答ができなかったばかりではなく、しかも何日も放置されていた怒りから、クレームになり、来店されなくなり、さらに口づてに地域に伝播し多くの固定客を失ったことがあります。
対して適切な対応をした競合店には、この事例が反面教師として利用されました。

売場には数多くの、種々雑多、広範にわたっての質問が寄せられてきます。常識の範囲で回答できる質問だけでなく、中にははてなと首をかしげるような珍問奇問もあります。首をかしげるだけでとどまらず、難問には質問者に成り代わって身を挺して取り組まなければならないものもあります。難問のほとんどは新しい種(品種を含めた)にかかわることや、栽培技術にかかわること、病虫害にかかわる問題ですが、その他にも安全性や法規、新しいサエインスにかかわる問題には一層真摯に対応せざるを得なくなります。

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